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原口古墳
原口古墳は、交通量の多い県道31号線(福岡・筑紫野線)沿いの筑紫野市大字武蔵字原口にあります。
1932(昭和7)年、開墾(かいこん)によって鏡などが発見され、はじめて古墳とわかりました。当時、鏡(三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう))とともに甕棺(かめかん)が出土したので「異例の古墳」として注目を集めましたが、これは古墳の下にあった弥生時代の甕棺墓まで一気に掘り下げたため、鏡と甕棺がいっしょに出土したと思われたようです。遺物は後円部のほぼ中央から出土しており、粘土や朱が多量に見つかったことから、埋葬主体部は粘土槨(ねんどかく)と推定されます。出土遺物は、三角縁神獣鏡3面、直刀3振、鉄斧4個、管玉・丸玉5個でした。
1971(昭和46)年、原口古墳の横に県道が建設されることになったため、発掘調査が行われました。その結果、原口古墳のすぐ横から新たに2基の古墳と甕棺墓が見つかりました。また、原口古墳は長いあいだ円墳と考えられてきましたが、改めて墳丘を測量したところ全長約80メートル、後円部径約56メートル、前方部幅約25メートルの自然地形を利用した前方後円墳とわかりました。古墳の形は西側に崩れていますが、前方部が短く、わずかに開き気味で、前方部と後円部には約6メートルの高低差があります。
この古墳は、墳形や出土遺物から見て、九州地方では最も古い時期に作られた大型の古墳と考えられます。
注1. 粘土槨
古墳中に粘土で床をつくり、その上に木棺を安置して棺の周囲を厚く粘土で 巻いたもの。木棺は腐ってしまうため、粘土のみが残っていることが多い。
注2. 三角縁神獣鏡
縁の断面が三角形で神と獣を主文とする鏡。神獣の数、形によって多くの種類があるが、基本的には中央の円紐(えんちゅう)を中心に相対するように神像と獣形が交互に配置される。文字や紀年銘を持つものもある。原口古墳出土の鏡は次のとおり。
* 天王日月・獣文帯三神三獣鏡
* 天・王・日・月・獣文帯三神三獣鏡
* 長宜子孫・獣文帯三神三獣鏡
<参考文献>
- 嶋田寅次郎「異例の古墳」『福岡県史跡名勝天然記念物調査報告書』第10輯 1935
- 柳田康雄編『古墳時代の謎』1988
- 西日本新聞社編『福岡県百科事典』1982
(赤崎敏男)
原口古墳
原口古墳出土の三角縁神獣鏡
(個人蔵・筑紫野市歴史博物館保管)
左 原口古墳全景(昭和47年ごろ撮影)
右上、右下 同古墳の横で発見された古墳
原口古墳の墳丘測量図 (『古墳時代の謎』より)
左 原口古墳出土の三角縁神獣鏡(東京国立博物館)
出土した3面の鏡のうちのひとつである
右 赤塚古墳(大分県宇佐市)出土の三角縁神獣鏡(文化庁)
筑紫野市立歴史博物館保管の鏡と同じ鋳型で作られている
『ちくしの散歩』より