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海を渡った腕輪(南海産貝製腕輪・隈・西小田遺跡群[光が丘])
弥生時代の初めごろ(約2,200年前)から、福岡平野を中心とする限定された地域で、有力なクニの首長のみがつけることができた腕輪があります。琉球(りゅうきゅう)列島以南に生息するゴホウラという大型巻貝を素材としたもので、貝(かい)輪(わ)と呼ばれています。
琉球列島からは九州の弥生土器の破片、鹿児島からは作りかけの資料が見つかっており、当時の人々は季節風などを利用して海を渡り、貝輪を手に入れていたと考えられます。その入手の難しさや、磨くことで乳白色に輝く美しさから、珍重されていたようです。
隈・西小田遺跡群では、弥生時代中期後半(約2,000年前)のひときわ大きな甕棺(かめかん)墓(ぼ)から、この貝輪が35歳前後と推定される男性が両腕にはめた状態で、41個も見つかっています。鏡や鉄(てっ)戈(か)という貴重品もあわせて持っていることから、この地域のクニを治める有力な首長と考えられます。この墓から出土した資料は全て国の重要文化財に指定されており、筑紫野市歴史博物館で見ることができます。