なごし
   29.「よど」と夏越し



▲上古賀八幡宮の「よど」。子どもたちが主体となる夏祭りである。
(1992年7月3日撮影)   

 

 筑紫野では、7月中〜下旬(旧暦6月)に行われる子どもたちの夏祭りのことを、一般に「よど」と言っています。出店や演芸が催される楽しい行事です。
  ところで、よどは「宵宮(よいみや)」の意味で(柳田国男「日本の祭」)、本来は神聖な祭りでした。かつてよどの夜におこもりをしたのも、そのなごりで、子どもが主体となるのは、清らかさが求められたからと考えられます。
  6月1日を氷(
こおり)の朔日(ついたち)といって、この日まで正月の餅(もち)を腐らないように保存しておき、まるで新年を迎える日のように、その餅を食べるという風習が全国各地に残っていますが、これは6月が一年の折り返し点になる大事な月と考えられていたからでしょう。すなわち、半年で衰えかけた人々のエネルギーを神聖な餅(=稲作民俗のシンボル)によって復活させ、あとの半年を乗り越えようとする意味があると考えられます。 

  また、各地には旧暦6月に夏越(なご)し祭りという行事を行うところがあります。これは、一年の前半6ヶ月間のけがれをはらい、後半6ヶ月間の健康を祈る行事です。ところによっては、名前を書いた人形や息を吹きかけた人形を川に流したり、焼いたり、あるいは茅(かや)で作った輪をくぐったりします。市内では7月31日(旧暦6月30日)に行われる二日市八幡宮の茅()の輪くぐりが有名です。輪をくぐるのは、その年の後半に入る意味もあるとされています。
  けがれをはらい、流行病にかからないように祈ることから、やはり旧暦6月に行われるぎおん祭りともいっしょになり、この祭りのことを「よど」といって、みこしを担ぐところもあります。
  このように、6月には、その年の区切りとなるような祭が集中しています。




▲二日市八幡宮の芽輪くぐり(1984年7月31日撮影)

▲大石での「おこもり」(昭和初期)


市内の「よど」行事      

柚須原
7月24日
9月1日
夏祭。
八朔のおんど。

本道寺
  
6月14日
(旧暦) 
ぎおん様のよど。 神火で火をたき、当番が参拝者にガメの葉まんじゅうを出した。
香 園
 
7月20日
7月23日
7月25日
およど。まんじゅうや煮しめなどを作る。
およど。まんじゅうや煮しめなどを作る。
およど。まんじゅうや煮しめなどを作る。

大 石
7月14日
村を上げての祭り。小組持ちまわりで座をきめ、博多方面から浪花節語りを呼んで、通夜堂(籠もり堂)で語ってもらった。行事はみくじで決めて子供相撲、汐井取り(天拝、荒川)などを行った。この行事は昭和初期まで行われていた。

7月9日
村中が竈門神社に参拝する。青年がまんじゅうを持って内山の集会所に集まり、夜はサイモンカタリなどを呼んでみんなで楽しんだ。昭和初期まで続いていた

牛 島
7月24日 子供会の夏祭り行事としておこなう。千燈を上げ夜店を出す。
原 田
     
7月9日

7月14日
7月19日
コンピラ様の夏祭としておこなう。子供たちの千燈が上がり、よどまんじゅう、ガメの葉まんじゅうなどを作って食べる。
ぎおん様のよど。
筑紫神社のよど。

上原田 7月24日 若宮神社のよど。

西小田
7月14日
7月24日 
ぎおん様のよど。
よど籠もり。夜になると青年たちがよどまんじゅうや弁当を持って籠もり堂に集まり、神社に千燈を上げて浪花節などを語ってもらった。

山 家
  
8月1日
(旧暦) 
よど籠もり。
下西山  7月25日 村中でよど籠もりをした。

*以上は、昭和30年代までの「よど」行事です。時代の推移とともに、期日、内容が変わってきたところもあります。
*天満宮で7月24日に「よど」が行われるのは、この日が菅原道真の命日の前日にあたるからで、御通夜の意味があるとされています。
*「よど」は、以上のほかにも市内各地で行われています。